「メビウスの輪」の表側
福岡の某大学に通う学生が、日々のどうでもいいことを備忘録代わりに書き記したり、オリジナルの推理小説を中心とした様々な小説をを発表したりするブログです。
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Who done it? -目次、及び説明-
Who done it? -目次-

その1 探偵・勝の受難 5/4更新
その2 執事・阿部秀三の証言 5/8更新
その3 客1・斉藤織枝の証言 5/8更新
その4 客2・長谷川恵子の証言 5/8更新
その5 客3・御手洗優の証言 5/8更新
その6 探偵・勝の推理 5/8更新
その7 解決編 5/23更新


※真相当てクイズについて
5/22までに、この事件の犯人は誰なのかを推理してこちらまでその名前、及びできれば推理のプロセスも付記してお送りください。
現時点では未定ですが、正解者には何らかの特典をおつけしたいと思っています。
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Who done it? その1 -探偵・勝の受難-
探偵・勝の受難

「さて、それでは勝(すぐる)探偵、君の推理を聞かせてもらおうじゃないか」
「その呼び方はやめて下さいっていつも言っているでしょう、羽山警部」
 尊敬と侮蔑が2:8でブレンドされた呼称と口調には、いつものことながら感心してしまう。会う度にハゲが進行している羽山警部から視線を逸らしつつ、私はこれ見よがしに大きなため息をついてみせた。
 羽山警部は、私がこの界隈で事件の解決を依頼されたとき、あるいはたまたま事件にまきこまれたときにいつもお世話になってしまう警部だ。いくら私が探偵をやっているとはいえ、若干大きすぎる遭遇率を考えると、彼とは何かしらの縁があるのかもしれない。……人の嫌味を天然で言ってしまうような人と縁があっても、全く嬉しくはないのだが……
 そんな赤の他人にとってはどうでもいいことを考えながらも、いつまでも黙っているわけにはいかず、私は乏しい現状認識を披露した。
「正直私も、現状を正確に把握しているわけではないんですよ。なんせ予定時刻だからって阿部さんに起こされて一緒に純輝(すみてる)氏の部屋を訪れたら、純輝氏の撲殺体を発見したってだけなんですから。だから私が今知っているのは、この館の主人である純輝氏が殺害されたってことと、凶器は部屋にあった花瓶だったってことと、解釈に苦しむダイング・メッセージと思しき血文字が残っていたことと……あとはそうですね、今日この館に招かれた私以外の三人には、純輝氏を殺害する動機があったってことくらいですかね」
「ふむ、それくらいは我々にだって分かっている」
 ならわざわざ私を呼ぶな、といいたくなるのを辛うじて堪える。
「しかし阿部さんに起こされたということは……君は事件発生時には寝ていたということかい?」
「昨日まで徹夜だったから疲れてたんですよ。ええ、それはもう泥のように眠っていましたよ。昼前に到着したのに、一度トイレにいくために部屋を離れたとき以外はずっと部屋にいたほどですからね。悪いですか?」
「いや、君らしいよ」
 そう言うと羽山警部は唇を少しあげて冷笑してみせる。これが均整な顔立ちの若手刑事ならまだ救いがあるだろうが、中年で禿頭一歩手前の刑事がやったところでただ嫌味なだけである。とはいえ……
「ま、君のことだ、どうせ事情聴取に付きあわせてほしいと思っているだろう。別に構わんぞ」
「いつものことながら、ありがとうございます」
 羽山警部ならこういう点に融通が利くのはありがたい。自分の横にいる何か言いたげな部下に左手で「黙ってろ」と示してみせると、羽山警部は右手で後ろの方を示してみせた。そこにはやや小さめのクローゼットがあった。そしてそのいわんとするところを理解する。
「まさか、あそこに入れと? 本気ですか?」
「他に君が隠れられるような場所があるかい?」
「確かにそうですけれど……」
「何、君なら充分入れるさ」
 反論しようかとも思ったが、これ以上言い争うのは不毛だと判断し、おとなしくクローゼットで事情聴取の様子を見学することとした。こういうところで融通がきかない羽山警部の頑固さを嘆きつつ、クローゼットへ向かう途中にわざと大きなため息をついてみせたことは言うまでもない。
Who done it? その2 -執事・阿部秀三の証言-
執事・阿部秀三の証言

 最初の入室者は、執事の阿部さんだった。
 老眼鏡や白髪から、彼が少なくとも50歳以上であろうことがわかりこそするものの、羽山警部のように禿げてはいないことや、その屈強な体つきからは、まだしばらく現役の執事として働いていくことに問題はないだろうと思わせるほどの若さも感じられた。
「さて、阿部さん、あなたには先程もお話を伺いましたが、確認したいこともありますので、改めていくつか質問をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「構いません。それで純輝様を殺した、にっくき下手人の正体がわかるというのなら」
 主がなくなったばかりとは思えないほど、阿部さんの挙動には少しも取り乱したところがなかったので、阿部さんは割とドライな性格なのかと思っていた。しかしそれは私の勘違いだったようだ。彼の内に秘められた忠義心は測り知れない。
「では、早速本題に入りましょう。ご存知のとおり、この館で殺人事件が発生しました。殺害されたのはこの館の主、草壁純輝氏なわけですが、そもそもこの館にお集まりになった方々は、一体どのような方なのですか?」
「遠い親戚の方々です。純輝様にはお子様がいらっしゃらなかったので、自分の遺産相続者を、今日お呼びした方々の中から決めようと思われていたようです。ただし、勝様は探偵としてご招待になられたようですが……」
「ふむ、遺産をね……純輝氏は、それほど財産をお持ちなんですか?」
「……ご存じないんですか? 純輝様は、一代で莫大な富を築かれた方でして、そこそこ名が知れた方なんですが……」
 心外だといわんばかりの口調の阿部さんの抗議に対し、ちょっと待ってくださいといいながら、資料を見る警部。
「ああ、本当ですね、失礼しました。それじゃあ、純輝氏が今日の客人をお呼びになられたんですか?」
「あ、いえ、お呼びする方を決めたのは純輝様ですが、お呼びしたのは私です」
 多分警部はそこまで厳密な回答はもとめていなかったろうが、無粋につっこむようなことはせずに軽くうなずいて見せた。
「そうでしたか、なら今回の事件の動機は、やはりそこら辺にありそうですな。ではそろそろ」
 そこで言葉を切って間をおくと
「今日起きた出来事を話してもらいましょうか」
 警察としての威厳を感じさせる、それでいて高圧的でない警部独特の口調でそう言った。
 警部の後ろにいてよかったと心底思う。もし正面にいたら、警部のあの嫌味な嘲笑を直視せねばならないところだった。

 今日、最初に館に訪れたのは勝様でした。
 とりあえず便宜上付けていただいている宿帳にお名前を書いていただき、ロビーにご案内しましてからお部屋の鍵をお渡ししました。勝様を部屋にご案内した後は、優様、織枝様、恵子様の順にいらっしゃいましたので、同様にご案内してからすぐに夕食の準備に取り掛かりました。何せこの館で働いているのは私一人だけですから。
 ですから、ご夕食までの間、他の皆様がどこで何をしていらっしゃったかは基本的には存じ上げておりません。そういえば一度、ロビーで織枝様と恵子様をお見かけしましたが……それくらいでございます。
 私と勝様で純輝様の部屋に伺いましたのは、夕食の準備が出来た後でございます。ええ、純輝様からその頃に勝様をお呼びするように仰せつかっていたものですから。しかし部屋の前についてみると、優様が途方にくれていらっしゃいます。部屋の中から返事がないということでしたので、鍵はかかっていなかったものですから、ドアを開けてみました。するとそこには純輝様、割れた花瓶、そして例の理解に苦しむダイニング・メッセージ……失礼、ダイイング・メッセージですか? とにかく、何かそういったものが残されておりました。
 私が存じ上げているのはその程度でございます。
Who done it? その3 -客1・斉藤織枝の証言-
客1・斉藤織枝の証言

 次に来たのは、招待客の一人である斉藤織枝だった。小柄でショートカットだが、目つきが鋭く子供じみては見えない。随分と目立つ左手とバランスをとろうとするかのように、右手首にはごつ目の黒い腕時計がつけられている。右は黒、左は白のコントラスト。ただし明らかに比率は白のほうが多い。
 彼女は偉そうに席に着くと、
「煙草、吸っていいかしら?」
 と警部に聞いてきた。
「構いませんよ」
 という警部の返事を最後まで聞かずに、彼女は器用に右手一本で箱から煙草を取りだし、くわえ、火をつけるという一連の作業を終えてしまい、そして美味そうに煙草を吸い出した。
「お名前をお聞かせ願いますか?」
「斉藤織枝よ」
 ぶっきらぼうに答える。それを聞いてから、ちょっと間をおいて警部は尋ねた。
「ご存知ですか? 煙草ってのは、煙草を吸っている本人が吸う主流煙より、周りの人が吸う副流煙のほうが害が大きいんですよ」
 刑事とはいえ、普通初対面の喫煙者に向かって言うセリフでは無いだろう。間違ったことは言っていないが、『煙草を吸っていいか』と聞かれて構わないといったのはどこの誰だ。
 もちろんよほど図太い人で無い限り、こんなことを刑事に言われて黙って煙草を吸い続けられるはずも無く、必然的に煙草の火は消されることとなる。
 むすっとした斉藤さんに畳み掛けるように、警部の質問は続く。
「ときに斉藤さん、あなたは普段からこんなに字が……その……上手で無いんですか?」
 言いながら宿帳を提示する警部。だからそんなこと、初対面の相手に聞くな。
「悪かったわね。私の利き手は左手なのよ」
 ますます不機嫌になる斉藤さんをよそに、満足気に頷く警部。
「なるほど、そうでしたか。それではそろそろ本題に入りましょうか」

 私が執事さんにロビーに案内されたときは、誰もいなかったわ。
 とりあえず荷物を部屋に置いて、ロビーに戻ったら、恵子がいたんで、そのままロビーに残ったわ。あ、恵子とは前……ん? その前だったかな……まあいつだったか来たときに知り合ったの。
 で、適当に話してから交代で純輝大叔父のところに挨拶に行ったわ。二人で純輝大叔父のところに行くと、まともな会話が出来ないだろうからさ。ま、結局のところ、まともな会話だったとは言いがたかったけれどね。
 私は恵子の後から挨拶に行ったけれど、お互いトイレに席を立ったりしたから、恵子が後からこっそり純輝大叔父のところに行くことも出来たはずよ。あ、今のは別に、恵子が犯人だって言いたいわけじゃないからね。そこのところ、誤解しないでよ。
 ……まあ変わったことって言ったら、ロビーに一度『スグル様はいらっしゃいませんか?』って、執事がやってきたことくらいかしらね。
 確か、勝って人、探偵やっているでしょう? 殺害現場に入った人物のなかに探偵がいるって、刑事が言っているのを聞いたわよ。彼が純輝大叔父の部屋にいたのは見たしさあ、私なんかの話聞くくらいなら、彼から話を聞いた方がいいんじゃない?
Who done it? その4 -客2・長谷川恵子の証言-
客2・長谷川恵子の証言

 次にやってきたのは、やはり招待客の一人である長谷川恵子。
 ゆったりとしたワンピースに身を包み、手入れの行き届いたロングヘアをなびかせながら、たおやかに席に着く。
 はっきり言って一挙一動が美しい。『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』とはこのことかもしれない。私が言うようなセリフでは無いだろうが。
「お名前をお聞かせください」
「長谷川恵子と申します」
 さて……こんな美人にも警部の嫌味は発動するのだろうか?
「長谷川さんは……いえ、やめておきましょう」
 止めるな! 気になる! 何を言いかけた!
「あ、あの……何を言いかけたんでしょうか?」
「あ、気にせんで下さい、大したことじゃないですから」
 私の思いも、長谷川さんの表情も気にせず、警部は質問を始める。
「それでは早速ですが、今日あなたが見聞きしたことをお聞かせください」

 私がこの館に到着したのは最後だったようですね。宿帳にもう他の方のお名前がいくつか書かれていましたし、私の後にやってきた方は見ていませんから。
 ロビーに案内されたときはどなたもいらっしゃいませんでしたが、すぐに織枝さんがいらっしゃったので、そのままロビーに残りました。
 途中で純輝大叔父様のところに伺ったりしながら、ずっと織枝さんとお話しておりました。
 一度執事さんが食事のアレルギーについて聞くためにどちらかをお探しになっていたことと……そうですね、あとは勝さんがロビーの前を行ったり来たりしたこと以外には、特に変わったことはありませんでした。
 ……あ、あの、ここでの話って、外部に漏れたりはしないんですよね。
 私、その……すみません、名前は失念してしまいましたが、私でも織枝さんでもない彼女が怪しいと思っています。
 だって、私、彼女だけは事件が起きるまで一度しか姿をお見かけしていませんもの。
 きっとよからぬことをしていたに違いありません、ええ、そうに決まっていますとも。
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