「メビウスの輪」の表側
福岡の某大学に通う学生が、日々のどうでもいいことを備忘録代わりに書き記したり、オリジナルの推理小説を中心とした様々な小説をを発表したりするブログです。
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ショートショート目次
ショートショートの目次


<CONFUSED MEMORIES>……ごめんなさい、私はあなたのことを覚えていない。
<月灯り・夢語り>……初恋はなぜ実らないのだろうか?
<まだ幼すぎる君には早すぎるかもしれないけれど>……誕生日、娘が知った真実とは?
<IOC>……そして彼女は苺をおもむろにカットする。
<夜の学校>……日常と非日常が溶け合う場所で織り成される、二人の少女の物語。
<秘めたる想い>……卒業式の日、生徒が教師に告げた秘めたる想いとは?
<余命一ヶ月>……医師の無情な宣告、残された時間はもう僅か。
<勇気>……果たして彼は勇気を出して、その一歩を踏み出せるのか?
<勝負の行方>……父と弟のある戦いを描いた作品。
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twnovel自選集
ここでは自分がtwitterで呟いているtwnovelの中で、

これは! と思うものを選んで掲載していきたいと思います。

卒業式 2010/3/27更新

ちなみにtwnovelとは……

twitterで書かれている小説のことです。
140字というtwitterそもそもの制限に加えて、
タグをつける関係で131字が上限となる非常にシビアな小説です。
最近では、単純に140字に収まらない小説も増えています。
とはいえ、百聞は一見に如かず。
まずは気軽に読んでみてください。

母の味
 母のことを思い出そうとすると、いつも真っ先に思い浮かぶのは後ろ姿だ。
 パート先から帰ってくるなり台所で料理をする母の後ろ姿こそが、私が一番良く見た母の姿だったからだろう。
 時間はそんなになかったはずなのに、とびきりの料理を作ってくれた母。
 私が料理を手伝おうとすると、いつも笑って居間で待つように言ってくれた母。
 なんに対しても一生懸命で、弱音を吐くことのなかった母。
 そんな母が死んでから、もう1年以上になる。
 私が一人暮らしをやめて父と暮らし始めるようになったのは、母が死んですぐの事だった。頑固で意固地で石頭の父が独り暮らしを始めたら、母の作った料理の味を忘れられずに、食事もろくすっぽとらないのは目に見えていたからだ。
 実際にはじめの頃は、私が作った料理には一切口をつけてくれなかった。それもそのはず、母が料理をしている時はいつも台所を追い出されていたため、私は母に料理を習ったことなどないのだから。
 今思えば、母は不器用な私を台所から追い出していた節がある。そう考えると、当時の私にとって台所は立ち入り禁止の聖域であり、料理を学ぶことなど不可能だったのだ、と自分に何度空しく言い訳したことか。
 最近は恥を忍んで料理教室に通うようになった効果が現れたのか、父も私の料理に口をつけるようにはなってくれた。ただ食べ終わったあとの感想は必ず「まだまだだな」の一言で終えられるのには閉口してしまう。
 さて、私がこんなことをつらつらと思い出していたのは、他でもない。ここにある母のメモのせいだ。これを見つけたのは、残業で帰りが遅くなってしまったある晩のことだった。
 
 *

 冷蔵庫を開けた私は凍りついてしまった。いや、別に冷蔵庫の冷気が私を凍てつかせるほど強力だったわけではない。冷蔵庫の中がほとんど空っぽだったのだ。
「……」
 迂闊だった。昨夜の時点で、食材がなくなっていたのは確認済みだった。だからこそ今日の帰宅途中での食材確保は必須事項だったのだが、残業のせいで完全に忘れていた。
 今更食材を買いにいこうにも、近所にはコンビニしかないから、相当時間がかかってしまう。最終手段として、母の存命中から冷凍庫の中で調理されるのを待ち望んでいる冷凍食品を使うという手があるにはあるが、それだと折角一年近くかけて培ってきた父の信頼を失う恐れがあった。
 しかし背に腹は変えられない。諦めた私はその冷凍食品を手にとり……
「ん?」
 偶然にもその下に敷かれていた母のメモを見つけることとなった。

 *

 私は料理を食べる父の姿を、黙って見つめていた。料理を食べた父が怒り出したらすぐにでも謝れるように心構えながら……
 食事を終えた父は、私の方をじっと見つめると、
「お前にも、母さんの味がだせるようになったんだな」
 と言って、そのまま自室に引っ込んでしまった。しかし私は見逃さなかった。立ち去る父の頬に一筋光る涙を。それは、母の葬式ですら涙を見せなかった父が、初めて私に見せた涙だった。
 だからこそ私は、母の秘密を決して父にだけは打ち明かすまいと心に決めた。
 だが……恥を忍んで料理教室に通い続けた私の立場は一体どうなるんだ?

(母のメモ)
 料理の極意:
 料理を作る時間が無い時は、コンビニで惣菜を買って、適当に皿に盛り付けましょう。
 大丈夫、毎日やってるから、父さんには絶対にばれません。
続きを読む
CONFUSED MEMORIES
 静かな夜だった。
 聞こえるのは、遠く足下から聞こえてくる潮騒だけ。耳を澄ませば、もしかしたら彼の心臓の鼓動だって聞こえてくるかもしれない。
 そっと彼の様子を伺う。
 彼は、ここに来てからずっと、ただ何も言わずにじっと海を眺めていた。その面持ちはなんだか深刻そうで、声をかけるのはためらわれる雰囲気で……
 そう、一言で言えば、彼の様子はどこかおかしかった。

 *

 彼の様子がおかしいのも無理はない。
 明日の私は、今の私とは全然違う私なのだから。
「……本当に、大丈夫なのか?」
 搾り出すように、彼はそう呟いた。
「大丈夫よ。そりゃあまあ、不安がないって言えば嘘になりますけれど、これで文字通り頭痛の種から解放されるんです、いっそ晴れ晴れとしていますよ」
 そんな彼の姿が見ていられなくて――私は努めて明るく振舞う。

 *

 そもそも初めからして、おかしかった。
「海に行くぞ」
 彼のそのあまりに唐突な提案は、深夜23時のものだった。
 呆気にとられる寝ぼけ眼の私の手をとり、彼は部屋から私を連れ出すと、車に乗せてそのままここまで連れてきてしまった。
 クシュン、と小さなくしゃみを1つ。考えてみれば今の私の格好は、寝巻きにカーディガンを羽織っただけの、簡素なもの。この時間、外を出歩くにはあまり適当でない。
「寒いか?」
 それまでずっと黙りこくっていた彼が、尋ねてきた。
「え? い、いえ、大丈夫です。別に寒くはありません」
 反射的に強がって見せる。
「そうか……」
 そう言って納得したような表情を見せると、彼はおもむろに自分が着ていた上着を脱ぎ始めた。
「え、あの、ですから、別に寒くなんかありませんって……」
「バカ、こういうときのお前は、変に遠慮してとっさに嘘をつくだろうが。それくらいわからない俺じゃない」
 言いながら、脱いだ上着を私にかけてくれた。それが暖かくて、そして彼のかけてくれた言葉が嬉しくて、私は自分の顔が紅くなるのを感じた。
「でもな、1つだけわからないことがある」
 私に上着をかけてくれた彼は、そこで一旦言葉を区切る。
「お前はどうして、俺についてきてくれたんだ? 俺のことは覚えていないはずなのに」

 *

「お前が……お前が無理してどうするんだよ!」
 彼の言葉は、今までとは違って、やけに語調が荒かった。
「……何を言ってるんですか、別に私、無理なんて……」
「無理してるだろ! 不安にならないはずがないじゃないか! 今までの記憶を失うその前の日に、不安にならないやつなんているわけがない!」

 *

 私が永い眠りから目を覚ましたのは、つい昨日のことだ。そこは見覚えのない病室で、混乱しきった私の前に現れた医者は言った。
 曰く、私はある2年前、ある難病にかかってしまった。当時、その病気にはこれといった治療法が存在しなかったが、幸いにもその後、画期的な治療薬が開発された。
 しかしこの治療薬にはある強烈な副作用があった。服用者は約1年間、目を覚まさずに昏睡状態に陥ってしまうこと。そして服用者は5年間前後の記憶を失ってしまうこと、の2つであった。
 勿論そんなことを言われたところで、私には実感など湧くはずがなかった。ただあるのは、心にポッカリ穴が開いたかのような空虚感だけ。
 そんな時だった。顔を見たこともない彼が、私の病室へやってきたのは……

 *

 もう、我慢の限界だった。
 私は泣いた。ただ延々と。欲しいものがもらえなくて愚図る子供のように、脇目も振らずに。
「イヤだよ……私、イヤだよ! ユウちゃんのこと、忘れたくない!」
 私とユウちゃんが出会ったのは3年前のこと。多少の個人差があるとはいえ、薬の副作用は3年前の記憶を見逃してくれるほどには甘くない。
 私は彼のことを忘れる。それは間違いのない、厳然たる事実だった。

 *

「さあ……なぜでしょうね?」
「……はぐらかしてるのか?」
「いえ、そんなことないですよ」
 それは、私自身疑問に思うところだった。目覚めたばかりで頭がはっきりしてなかったとはいえ、私は特に抵抗することなく彼についてきた。彼の様子が、どこかおかしいと感じていたにも関わらず、である。でも……
「でも、あえて言うなら……直感、ですかね?」
「直感?」
「ええ、なんとなく私は、この人のことが好きだったんじゃないかなって、直感です」
 その時の彼の顔は、なんとも形容しがたいし、他人が形容していいものじゃない気がした。でも、あえて言わせてもらえば、それはきっと世界で一番幸せな泣き顔だった。
 だから私はそんな彼に言葉をかけることはせず、ただ黙って見守っていた。

 *

「また来年、お前の誕生日にここに来ようか」
 彼は不意にそう告げた。
「……どうして? 来年の私は、今の私じゃないんだよ? その約束を、私は覚えていられない」
「いいんだよ。お前が覚えていなくても、俺が覚えている。お前との思い出も、今日の約束も、何もかも。それに……」
 そう言ってから、照れ臭そうに頭をかいて、
「俺との思い出があってもなくても、お前はお前だろ?」
 それはどう考えても、魔法の呪文だった。あんなにも不安で一杯だった私の心を包み込んでくれる、優しい呪文。
 さっきまでとは違う涙が頬を伝うのを感じながら、その魔法の呪文に最後の一歩を押された私は、バカなお願いを口にすることにした。
「……じゃあ、私からも1つ、いいかな?」
「なんだ? 今の俺なら、大抵の頼みなら聞くぞ」
 その言葉が嬉しくて、だから私は最後の願いを告げる。

 *

「約束だったんだよ」
 それは暫く泣き続けた彼が、最初に告げた言葉だった。
「約束って、何がですか?」
「お前を誕生日にここに連れてくること、それがお前と最後に交わした約束の1つだったんだ」
 誕生日って……それじゃあ今日は……
「誕生日おめでとう、茜。そして俺は、もう1つの約束も確かに果たした」
 もう1つの約束を聞くなんて、野暮なことをする必要はなかった。
 だって彼は、私を優しく抱きしめてくれたんだから。1年前だろうと何年前だろうと、きっと私ならこういうだろう。

 *

「記憶を失くした私を、また愛してくれませんか?」
 その言葉に、彼はただ、黙って頷いてくれたのだった。
月灯り・夢語り
 それは、月明かりがふんわりと落ちてくる、ある夜に
 周囲に人影の見当たらない、ちょっと洒落た片田舎の居酒屋の前で
 カランカランと、小気味の良い音とともに、一人の若い男が店を出たところから始まる物語。
 
 *
 
 男は、胸ポケットに手を伸ばした。そこにあったのは開封済みのタバコの箱だ。
 彼は慣れた手つきでタバコを一本取り出し、口に銜えると、左手を風除けにしながら、ライターを使い、それに火をつけた。
 たばこの煙か、はたまた吐息か、白い煙が宙に舞う。男はぼんやりとその煙の行方を見るではなしに見つめていた。
 その煙が空にほとんど溶けようとしていた頃、カランカランと、ドアベルの音とともに再び店の扉が開かれた。
 そちらに目を向けた男の目が、驚きのせいか、心持ち大きく見開かれる。
「そんなところで何しているの、勝彦君?」
 扉から顔だけ出して、まだ幼さの残る、艶やかな黒髪のうら若き乙女が男に尋ねた。
「何って……タバコを吸ってるのさ」
 いたずらを見咎められた子供のように、ばつが悪そうに男――勝彦は返事した。
 彼女はその返事に納得できなかったらしく、首をかしげてから店の外に出て、扉を閉めた。
「おいおい、こんな寒い日にわざわざ好きこのんで外に出てくることはないだろうに」
「そういう勝彦君だって、わざわざこんなところでタバコを吸うことは無いんじゃない? 中には灰皿もあるし、それに他にもタバコを吸っている人はいたじゃん」
 彼女の素朴な疑問に、勝彦は苦笑しながら答える。
「いや、だってさ、皆がどう思ってるか知らないけれど、少なくとも俺は永畑先生がいる前でタバコは吸えないよ」
「あらあら、クラスで一番やんちゃだった勝彦君からそんな言葉を聞けるなんて」
「言ってくれるなあ」
 苦虫をつぶしたような顔で勝彦はぼやく。
「でも、まあ永畑先生には俺なりに感謝してるからさ、先生が最後の授業で教えてくれたことを目の前で裏切るのは流石に忍びなくってさ」
「最後の授業……ってなんだったっけ?」
「覚えてないか、今日の俺たちの話……同窓会の話だよ」
 それを聞き、
「あー、そういえば、そんな話があったようななかったような……」
 彼女はこめかみを軽く押さえながら記憶をたどる。
「美弥子がそんな調子なら、みんな似たようなものかもしれないな。けれど俺は、どうしてだかよく覚えてるよ。かつての教え子たちとの同窓会――それも今日の俺たちみたいに成人の日を祝っての同窓会の席で先生が一番悲しかったことは、教え子たちの何人かが喫煙者になっていたこと、だから俺たちの同窓会の時は、喫煙者がいないことを願う。そんな話をしてくれたんだ」
 女性――美弥子の顔が緩む。
「……思い出した、確かにそんな話をしてくれたよね、ホームルームの時間だったかな」
「ああ、テーマは喫煙の害についてだった。あの頃は、こんな毒物の摂取、絶対にするわけないって思ってたのにな。まさか喫煙者になってるなんて夢にも思わなかったよ」
 自嘲気味に呟きながら、勝彦はタバコを再び銜え、紫煙をくゆらせる。
「そっか……そうだよね……じゃあ例えば、私と恋人になってる夢は見たりしてたの?」
 美弥子の言葉に、勝彦はゲホンゲホンと、タバコのせいではない大きな咳をする。
「お前、何をいきなり……!」
「安田君たちに聞いたよ、勝彦君の初恋の人って、私だったんでしょ」
 いたずらな微笑みで、美弥子が問いかける。
「あいつら、裏切りやがったな……」
 苦々しげに勝彦がこぼす。
「ってことは、やっぱり安田君たちが言ってたことは本当なんだ。そっか、ちょっと嬉しいかも」
「嬉しいだなんて、お世辞はいいよ。クラスで一番のやんちゃ者だった奴から惚れてたなんて言われても、困るだけだろう?」
「そんなことないよ、だって、私の初恋の人も勝彦君だったし」
 サラリと告げられた美弥子の言葉に、勝彦の目が点になる。
「あれ? 何、その目は? そんなに意外? 私としては結構、そういう素振りは見せてたつもりなんだけれどね」
「そ、そうなのか? え、じゃあ待てよ、あれか、もしかしてあの時、勇気を出して告白してたら今頃もしかして……」
 慌てた素振りで勝彦が言葉を並べる。
「そうだね、もしかしたら今頃私たちは、恋人同士だったかもしれないね」
 クスクスと、どこかしら小悪魔を連想させるような笑顔で、美弥子が囁く。
「そ、それじゃあ今からでも……」
「ざーんねんでした、こんな美人を世の男どもがほったらかしにしていると思う?」
 満面の笑みとともに、美弥子が嘯いてみせる。
「そりゃ、そうだよなあ」
 言って、勝彦も大げさにうな垂れてみせる。
「……でも、今の話を聞いてたら、なんとなく分かっちゃったかも」
「分かったって、何が?」
 困惑気味に勝彦が聞く。
「よく言うじゃない? 初恋は実らないって。それって半分正しくて、半分間違ってるんじゃないかなって、思ったんだ」
 勝彦が首をかしげる。
「なんて言えばいいのかな。ほら、さっきのタバコの話もそうだけど、私たちが子供の頃、大人になった自分が何をしているかなんて、全然想像できないじゃない? ただそれとは逆に、未来の私たちが過去を振り返れば、今の私たちを形作っているもの、それは見えてくると思うんだ」
「確かにな、子供の頃の俺には気づけなかったことだけれど」
「そう、まさにそれ。私たちは常に何らかの選択を繰り返しながら、少しずつ大人になっていく。でも、子供の頃の私たちはそれに気づけない。だから、そう、初恋は実らないんじゃない。実らせることを選ばないんだよ」
「それ、美弥子に言われると辛いなあ」
 携帯灰皿でタバコの火を消しながら、勝彦は天を仰いだ。
「でもさ」
「え?」
「確かに夢を叶えることを選ばなかった過去を拭うことはできないけれど、夢を叶える未来を選ぶのに、遅いってことはないよな」
 自分に言い聞かせるように述懐すると、勝彦は先ほどまでとは打って変わった真剣な面持ちで美弥子を見つめる。
「なあ、どう思う? 美弥子」
「ど、どうって、言われても。ほら、私、だって今、彼氏がいるし」
「もう嘘はつかなくていいさ。お前みたいな内弁慶に彼氏なんてできるわけないだろ」
 呆れ気味に勝彦が言ってのける。
「な! ちょ、ちょっと。勝彦に私の何が分かるって……」
「分かるさ、中学を卒業するまでずっと見ていたんだから」
 顔を真っ赤にして反論する美弥子の言葉を遮り、勝彦は真っ直ぐ美弥子を見つめると、優しく美弥子を抱き寄せた。
「も、もう……ば、馬鹿……」
 二つの影が一つに重なる様を、月だけが見つめていた。

 *

「ってな展開で、勝彦と美弥子が結ばれたってのはどう?」
「……あんたさ、もしかして親友の結婚式の間中、ずっとそんなことを妄想してたの?」
「失敬な。披露宴の間もずっと考えてたさ」
「……きっかけは同窓会で再開したことでしたって言葉一つでそこまで想像できる、あんたの想像力には時々敬服するわよ」
「うーん、誉められているような気がしないのはなぜだろう?」
「当たり前よ、誉めてないもの」
「あらら、そんなにはっきり言わなくても。でもさ、自分で言うのもなんだけれど、結構いい話だと思わない? 昔どこかの魔法少女が夢見れば夢も夢じゃないって言っていたけれどさ、それってやっぱり真理じゃないよね。夢を実現するためには、夢を見るだけじゃなくて、夢を叶えるための選択が必要なんだよ」
「まあ確かにそれは、あんたの言うとおりでしょうね」
「そうだよねー。というわけで結婚しよっか、美南」
「な、な! ち、調子に乗るな! そういうことはもっとロマンチックな時と場合を選んで言いなさいよ! 世間話のついでみたいに言うな!」
「えー、満月の夜、海沿いの帰り道。この上なくロマンチックだと思うんだけどなあ」
「寝言は寝て言え!」
「とか言っちゃって、本当は嬉しいくせにー」
「こ、このー! 私はね、武、あんたのそういところが嫌いなのよ!」
「そう? 僕は美南のそういうところが好きだけれどねー」
「……も、もう、馬鹿ー! し、知らない!」
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