「メビウスの輪」の表側
福岡の某大学に通う学生が、日々のどうでもいいことを備忘録代わりに書き記したり、オリジナルの推理小説を中心とした様々な小説をを発表したりするブログです。
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骨の髄まで愛してる(求む! 感想、批評、誤字指摘)
『骨の髄まで愛してる』の連載を開始します。
公募前提で連載していきたいと考えていますので、厳しい突っ込み、及び率直な感想歓迎です。
ぜひお気軽に書き込んで行ってください。

『骨の髄まで愛してる』
第1話あらすじ:幽霊や妖怪を見ることができ、日常的にそれに親しんできた少年。
ある日彼は、自らの手に負えない異形の怪物と遭遇し、絶体絶命の危機に陥る。
そこに現れた幼い少女、彼女は少年を窮地から救うと、疑問を抱く少年に告げる。
「だってわたくし、あなたのことを骨の髄まで愛していますもの」

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骨の髄まで愛してる 第1話 12th rib その1
 それはあらゆる意味で悪夢のような光景だった。
 異形の化物を相手に、少女は蝶のように舞う。
 言うまでもなく、異形の化物は、その存在自体が悪夢じみている。
だが、少女の姿もまた、ある意味では悪夢じみているのだ。その化物相手に、動じることなく対峙し、紙一重で化物の動きをかわし、そして傷を負わせる。幼い外見とは裏腹に凛としたその姿に、俺の目は否が応でもひきつけられてしまう。そう、目を離したくても離せないという点において、まさに彼女は悪夢じみているのだ。
目の前で繰り広げられる、次元の違う戦いに巻き込まれてしまった不幸を恨みつつ、俺は思わずにいられなかった。
 今なら祖父さんの修行も、もっと真面目に受けられるだろうか、なんて場違いなことを。
骨の髄まで愛してる 第1話 12th rib その2
 その日は、三寒四温の寒に当たるであろう、春を間近に控えた空寒い一日だった。
 俺、賀茂藤矢は、コンビニで買った肉まんを食みながら、学校からの帰り道にあたる商店街のアーケードを急ぐでもなくのんびりと歩いていた。
 黄昏時はあまり好きではない俺だが、ここだけは別だった。適度に人通りがあり、それでいて決してゴミゴミとはしていない。ここなら厄介なノイズもほとんど聞こえてこない……はずだったんだが……
「お兄ちゃん、僕の声が聞こえるの?」
 どこかから声が降ってくる。立ち止まって声の方に顔を向けると、小学校低学年くらいの少年が、とある商店の二階の窓から顔を出してこちらを見下ろしていた。まだ寝るには早いというのに、寝巻き姿なところを見ると……
「良かった、やっぱり聞こえるんだね? 昨夜からここでずっと、こうやっているのに誰も気付いてくれなくって……」
 少年は本当に嬉しそうに顔をほころばせる。
「ねえ、お兄ちゃん、よかったら上がってよ、今、お父さんもお母さんもいなくて、退屈してたんだ」
 きっと、その少年の気持ちに嘘は無いのだろう。だから今から俺がしようとしていることに、若干の罪悪感がないわけではない。
「ねえ、早く、お兄ちゃん」
「坊主、一つ聞いていいか?」
「なあに?」
 頼むから、そんな無邪気な顔を見せないでくれ。思いつつ、尋ねる。
「お父さんとお母さんは、今、どこにいるんだ?」
「うーんとね、どこか遠いところに行っちゃったんだ」
「そうか……それじゃあお前も、すぐ二人のところに行ってやれ」
 意を決して、唱える。
ナウマクサンマンダバザラダンカン!」
 絹を裂くような鋭い悲鳴が少年の口から放たれる。刹那、黒い小さな影が少年から飛び出し、グギギと耳障りな悲鳴をあげながらのた打ち回り、俺の目の前に落ちてきた。
 躊躇うことなく、俺はそいつを踏み潰した。足を上げると、最早そこに何かが存在した形跡は残されていない。
 再び顔を上げると、少年の輪郭が段々と薄れ始めていた。低級の悪鬼の類にとりつかることで辛うじて現世に留まっていた少年の魂が、形を維持できなくなりつつあるのだろう。
 とはいえ、少年がその現実を素直に受け容れられるかと言えば、そうでもない。少年は必死に、泣きながら何かを俺に伝えようとしている。それは分かるが、多少霊感がある程度の俺では、もうその声なき声を聞いてやることはできなかった。だから俺は無責任に告げる。
「泣くな、坊主。向こうでお父さんやお母さんが待ってるぞ」
 それが聞こえたのか、聞こえなかったのか。少年は泣き止んでくれた。笑顔とまでは行かないが、十分及第点だろう。
 間もなく、少年の姿は完全に霧散した。
 暫く何をするでもなく佇み、やがて視線をやや下に移す。先ほども確認した店の名前をもう一度確認する。
 『富田商店』。
 今朝からニュースで何度もお目にかかった名前だ。借金で首が回らなくなり、一家心中という道を選んでしまった商店の名前として、この界隈では今や知らない者はいないだろう。
「たく、不景気のバカヤローが」
 吐き捨てずにはいられない。
 商店街の中は、霊やら悪鬼の類が比較的少なくて、俺の数少ない安寧の地だって言うのに、こんなにもムカムカとした気分にさせやがって。
 毒づきながら、ふと周囲を見回す。
「ママー、あのお兄ちゃん、さっきから何を一人でやってるのー?」
「しっ! 見ちゃいけません!」
 幼い子供を急かしながら、母親と思しき女性が子供の手を引いて足早に離れていく。
 別のところでは、買い物を終えたオバサンたちがこちらを伺いながら、こちらに聞こえないように注意をしながら話をしている。
 ……そろそろ人目が気になってきたし、ここは大人しく帰るに限る。
そう思って踵を返したときだった。

(やっと見つけた)

 ん? 誰かの声が聞こえた気がして振り返る。だがやはり、辺りには誰もいない。
 今の声は何だったのだろうか? 疑問に思いつつも、考え事をするにはちょっと疲れていた俺は、その声を気のせいと言うことにして、さっさと家路につくことにしたのだった。
骨の髄まで愛してる 第1話 12th rib その3
 俺の日常は昔からこうだった。他の人には見えない何かが見える、聞こえる。
 祖父さんの話だと、うちはそういう家系らしくて、死んだ父さんもそういう力を持っていたらしい。
 別に奴らの姿が見えたり聞こえたりするだけなら何の問題もない。だが、困ったことに奴らは様々な手を使って俺たちに干渉してくる。どうやら奴らにとって俺たちは、甘い蜜のように美味そうに見えるらしい。
気をつけなければならないのは、奴らの見た目に騙されないこと。人畜無害な振りをして、その実、邪悪な本性を秘めているやつはいくらでもいる。さっきみたいなのがその一例だ。
 小さい頃、素直な俺は奴らの外見に騙されて、一度痛い目にあったことがある。それに懲りてからは、祖父さんの修行のもと、奴らへの対処法を身につけるに至り、今では程度の低い奴らなら、自力で退治できるようにはなった――もっとも、ちょっとレベルが上がると俺の手には負えなくなるのだが。
 とにもかくにも、俺は自分の力と境遇に、それなりの折り合いをつけているという自信を得ていた。祖父さんには修行が足りんと言われてはいたけれど、手に負えない相手を見つけたときは、その場は一旦トンズラして、後で祖父さんに退治してもらえば良い。最低限自分の身を守ることくらいは出来るくらいの力があれば充分だ。

 心の底から、そう、思ってたんだ。
骨の髄まで愛してる 第1話 12th rib その4
 商店街のアーケードを抜けると、家まではもう一本道だ。
 適度に賑わっている商店街とは打って変わって、このあたりは閑古鳥が鳴いている。ゴーストタウンと言っても差し支えない。商店街がアーケードを作る際に、収益が出る見込みがないと切り捨てた地域なので、ある意味当然といえば当然ではある。
 この道を通るときは、いつもあまり良い気分はしないが、さりとてここを通らないのは大きな回り道になってしまう。幸いにも、雰囲気の割にはここでは奴らに出くわしたことはないし、と、心なし早足で歩を進めていると、どこかしらから妙な物音が聞こえてきた。
 バリボリバリボリ
 はじめは誰かがスナック菓子でも食べているのかと思った。単調なリズムで何かを噛み砕く音から、俺が真っ先に連想したのはそれだったからだ。
 しかしそれにしてはやけに音が大き過ぎはしないだろうか。普通の人間が俺に見えないところでスナック菓子を食べたところで、その音がこれほどはっきりと俺の耳に届くことはないだろう。
 なんだかその音が無性に気になってしまって、俺は歩を止めて耳を澄ました。
 やがて単調な音の中に、グチャリと液体が飛ぶような音と、ヒャウとか細い鳴き声のようなものが混じっていることに気がついた。そしてその音が、どうやら少し先のビルとビルの間の路地から聞こえているらしいということにも。
 一瞬迷ったが、好奇心には勝てない。何か厄介ごとに巻き込まれそうなら、さっさと逃げ出せばいい。そんな軽い気持ちで路地を覗いた。
 問題の路地はほとんど陽も差さず、これといった光源もない暗がりで、相変わらず音はするものの、その音の正体は分からない。そのため俺は、路地に一歩、そして二歩踏み込んで目を凝らした。
 やがて暗闇に目が慣れてきて、そこで起こっていることの全貌が見えてくる。
 ――見なければ良かった。
 すぐにそう、後悔した。
 そこにいたのは、今まで見てきたどんな奴らよりもおぞましい醜悪な化け物だった。
 ぶよぶよしたでっかい芋虫、とでも言えばいいのだろうか。重量級の力士をふた回りほど大きくしたようなサイズのそいつを、芋虫と呼んでもいいのなら、の話ではあるが。
そいつの薄汚れた桃色の体は、芋虫のようにいくつかの節に分かれていて、そのそれぞれに足のようなものがついていた。ただし一番上だけは人間と同じような手になっているところがグロテスクすぎる。
 問題はその化け物だけではなかった。俺の興味をひいた妙な音の正体、それはそいつの咀嚼音だった。何を食べていたかって?
 猫だよ。
 そうと分かれば、さっきまでの音の意味も自ずと明らかになる。この猫は、生きながらに化け物に食われていたんだ。バリボリと自らの骨が噛み砕かれる音を聞きながら死んでいくなんて、想像もしたくない。
 唯一の救いは、件の猫が現時点では絶命していることだろう。虚ろにこちらに向けられた視線には生気が全く感じられないし、それに何より、上半身だけで生命活動を維持できるとは思えない。
 とにもかくにも今の俺にできることは、この場から一刻も早く逃げ出すことだった。幸いにも問題の異形の化け物は、食事に夢中らしく、こちらに気付いている様子はない。奴に気づかれないようにこの路地から抜け出し、後は全速力で家まで走り、祖父さんにこの化け物のことを報告する。それが最善策だ。
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