「メビウスの輪」の表側
福岡の某大学に通う学生が、日々のどうでもいいことを備忘録代わりに書き記したり、オリジナルの推理小説を中心とした様々な小説をを発表したりするブログです。
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骨の髄まで愛してる 第1話 12th rib その4
 商店街のアーケードを抜けると、家まではもう一本道だ。
 適度に賑わっている商店街とは打って変わって、このあたりは閑古鳥が鳴いている。ゴーストタウンと言っても差し支えない。商店街がアーケードを作る際に、収益が出る見込みがないと切り捨てた地域なので、ある意味当然といえば当然ではある。
 この道を通るときは、いつもあまり良い気分はしないが、さりとてここを通らないのは大きな回り道になってしまう。幸いにも、雰囲気の割にはここでは奴らに出くわしたことはないし、と、心なし早足で歩を進めていると、どこかしらから妙な物音が聞こえてきた。
 バリボリバリボリ
 はじめは誰かがスナック菓子でも食べているのかと思った。単調なリズムで何かを噛み砕く音から、俺が真っ先に連想したのはそれだったからだ。
 しかしそれにしてはやけに音が大き過ぎはしないだろうか。普通の人間が俺に見えないところでスナック菓子を食べたところで、その音がこれほどはっきりと俺の耳に届くことはないだろう。
 なんだかその音が無性に気になってしまって、俺は歩を止めて耳を澄ました。
 やがて単調な音の中に、グチャリと液体が飛ぶような音と、ヒャウとか細い鳴き声のようなものが混じっていることに気がついた。そしてその音が、どうやら少し先のビルとビルの間の路地から聞こえているらしいということにも。
 一瞬迷ったが、好奇心には勝てない。何か厄介ごとに巻き込まれそうなら、さっさと逃げ出せばいい。そんな軽い気持ちで路地を覗いた。
 問題の路地はほとんど陽も差さず、これといった光源もない暗がりで、相変わらず音はするものの、その音の正体は分からない。そのため俺は、路地に一歩、そして二歩踏み込んで目を凝らした。
 やがて暗闇に目が慣れてきて、そこで起こっていることの全貌が見えてくる。
 ――見なければ良かった。
 すぐにそう、後悔した。
 そこにいたのは、今まで見てきたどんな奴らよりもおぞましい醜悪な化け物だった。
 ぶよぶよしたでっかい芋虫、とでも言えばいいのだろうか。重量級の力士をふた回りほど大きくしたようなサイズのそいつを、芋虫と呼んでもいいのなら、の話ではあるが。
そいつの薄汚れた桃色の体は、芋虫のようにいくつかの節に分かれていて、そのそれぞれに足のようなものがついていた。ただし一番上だけは人間と同じような手になっているところがグロテスクすぎる。
 問題はその化け物だけではなかった。俺の興味をひいた妙な音の正体、それはそいつの咀嚼音だった。何を食べていたかって?
 猫だよ。
 そうと分かれば、さっきまでの音の意味も自ずと明らかになる。この猫は、生きながらに化け物に食われていたんだ。バリボリと自らの骨が噛み砕かれる音を聞きながら死んでいくなんて、想像もしたくない。
 唯一の救いは、件の猫が現時点では絶命していることだろう。虚ろにこちらに向けられた視線には生気が全く感じられないし、それに何より、上半身だけで生命活動を維持できるとは思えない。
 とにもかくにも今の俺にできることは、この場から一刻も早く逃げ出すことだった。幸いにも問題の異形の化け物は、食事に夢中らしく、こちらに気付いている様子はない。奴に気づかれないようにこの路地から抜け出し、後は全速力で家まで走り、祖父さんにこの化け物のことを報告する。それが最善策だ。
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