「メビウスの輪」の表側
福岡の某大学に通う学生が、日々のどうでもいいことを備忘録代わりに書き記したり、オリジナルの推理小説を中心とした様々な小説をを発表したりするブログです。
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死体(それ)はタイムマシンに乗って 事件編その7
不意に視界が遮られる。なんのことはない、ドアのところに人が立てばそうなるのは自明なことだ。
「ちょっとよろしいですか? 勝さん?」
 扉の前に立ったのは、二人の地名刑事だった。早速おでましか、と心の中で呟く。
「構いませんが、ご用件は何でしょうか?」
 多少の皮肉をこめて尋ねてみる。すると意外にも二人は苦虫を潰したような表情を見せ、互いに顔を見合わせた。そしてため息を一つつくと、諦念を漂わせつつ御堂刑事は言った。             「捜査にご協力を願いに伺いました」
 言葉の真意を掴みかね、一瞬返答に詰まる。      
「すみません、今なんて?」          
「ですから、捜査にご協力願いたいと言っているんです!」
 そう言ってから御堂刑事は今度はあからさまにため息をついてみせると、              
「上からの命令なんですよ! 全く、あんたは何なんだ、どう考えたってこの中で一番怪しいのはあんたななのに、なんでそのあんたに協力を……」
 と愚痴をブツブツとこぼし始めた。
 なるほど、誰かは具体的には分からないが、以前俺が事件解決に協力したときの刑事が気を利かせてくれたらしい。情けは人のためならず、といったところだろうか。
 とりあえず俺は現時点でかけられる最大限の慰めの言葉をかけてやることにする。         
「大丈夫ですよ、御堂刑事、天野刑事。今日中にお二人には、この事件における真実をお見せして差し上げますから。すぐにその不愉快な気分は一掃できます」

 その後、二人の地名刑事は、渋々ながら俺と稔を南棟の空き部屋に案内してくれた。そこには暫定的に諏訪さんの所持品が保存されていた。
特段これと言って、彼女の所持品の中に気になるものは見当たらない。あるものを除いては。
 俺は諏訪さんの携帯電話をとると、念のためにと思いつつ稔と一緒にあることを確認したのだが……
「あれ?」
 その結果は、俺の予想に反するものだった
(これは一体……)
 その意味を考えながら携帯を操作していると、留守録が一件残されていることに気がついた。メッセージが残されたのは、昨夜の八時五十四分だ。
 一応二人の刑事に了承をとってから、その留守録されていたメッセージを確認すべく、再生ボタンを押す。
『あ、姉ちゃん? いつものドラマだけど、またタイマー予約を入れてくの忘れただろう? 代わりに入れといてやったから、感謝しろよ』
 俺も稔も黙りこんでしまった。この時この声の主は、自分の姉がどんな目にあっているのか想像だにしなかっただろう。自分が暮らしてきた日常があっという間に壊れる瞬間、そんなものの存在さえ想像できなかったに違いない。日常と非日常の間に隙間なんてほとんどないことに、気がつかなかったに違いない。そう、これはまるで
「十年前の俺みたいだな」
 寂しげに稔は、そう呟いたのだった。

「御堂刑事、天野刑事、もう少し聞いておきたいことがあるんで、ここは稔に任せてちょっと廊下に出ましょうか」
「廊下に? わざわざ廊下に行かなくとも、別にここで……」
 言いかける御堂刑事の襟を掴み、天野刑事が率先して廊下へと出る。去り際こちらを一瞥すると何か言いたげな表情を見せたが、そのまま何も言わずに部屋を辞去した。
 そんな彼女の心遣いに痛み入りつつ、俺もその後に続く。
「じゃあ稔、ここは任せたぞ」
 ああ、と力なく呟き、稔は手を軽く振った。出来るだけ早く稔がいつもの調子を取り戻してくれることを望みつつ廊下に出ると、二人は蔵のほうに向かってズカズカと進んでいる最中だった。
「わざわざありがとうございます、天野刑事」
 その背中に俺は感謝の言葉をかける。彼女は振り返ると、
「別に礼を言われるほどのことじゃありません。あなたが今日中に事件を解決できないようなら、あなたを最重要参考人として連行する、ただそれだけのことですから」
 それだけ言って再び前を向き、歩き始めた。
「お、おいおい、彼は何か聞きたいことがあって私たちを呼び出したんじゃ……」
 未だに空気の読めていない御堂刑事のために、折角だから一つ質問をしておく。
「そうですね、じゃあ諏訪さんの死亡推定時刻を教えてもらえませんか?」
「ああ、そういえばまだ言ってなかったな、しっかりとした検死をしなければなんとも言えないが、少なくとも昨日のうちには殺害されていたようだ。それと彼女には、麻酔で眠らされた形跡があったそうだ」
「麻酔?」
 それは意外な情報だった。確かに犯人が彼女を監禁するために麻酔を使うのは不自然ではない、だがそれならなぜ彼女は電話を使うことが出来たのだろう。
「ああ、そうそう、それと事件と直接関係あるかどうかは分からないが、面白い情報が一つあるぞ」
「なんですか?」
 あまり期待せずに、続きを促す。
「殺害された諏訪燈子の車なんだが……」
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