「メビウスの輪」の表側
福岡の某大学に通う学生が、日々のどうでもいいことを備忘録代わりに書き記したり、オリジナルの推理小説を中心とした様々な小説をを発表したりするブログです。
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死体(それ)はタイムマシンに乗って 解決編その1
 解決編

 刻限は今や夕方。改めて自分が組み立てた推理に矛盾点がないかを確認し――確信する。自らの推理の確かさを。そしてそれを見計らったかのように、ノックもせずにドアが開けられる。
「真相が分かったって言うのは本当か!」
 興奮した面持ちで、叩きつけるように俺の部屋のドアを開いた稔は、開口一番そう叫んだ。俺は腰掛けていた鏡台から立ち上がり、
「ああ。とりあえず落ち着けよ、稔。お前には頼みたいことがあるんだ。だからまずは、話を聞いてくれ」
 言葉を返す。
「俺に頼みたいこと?」
「ああ、それは最後に話すから、とりあえず話を聞いてくれるか?」
「分かった、俺に出来ることがあるなら協力するよ」
 俺は軽く頷き――推理の披露を開始した。

「まずはじめに、俺たちは一つ重大な勘違いをしていたことに気がつかなきゃいけない」
「勘違い?」
「ああ、諏訪さんはそもそも、監禁などされていなかったんだ」
「はあ? どういうことだよ、それは」
 稔が目を丸くして尋ねる。
「もっと正確に言えば、彼女には誰かに監禁されているという認識はなかったってことさ。事実、彼女は『閉じ込められた』とは言っていたが、『誰かに閉じ込められた』と言っていたわけじゃない。つまりそもそも、彼女を閉じ込めた『誰か』を想定すること自体が間違いだったんだ」
「待ってくれ、俺には話が飲み込めないぞ」
何がなんだか分からない、といった面持ちで稔が説明を求める。
「簡単なことだよ。例えばお前がトイレから出ようとして、鍵が壊れてしまったとする。そして外にいる誰かに助けを求めようと思ったら、お前は何ていう?」
「そりゃあもちろん、『トイレに閉じ込められたから出してくれ』って……あ!」
「そういうことさ、彼女は別に自分を閉じ込めた第三者を恐れて助けを求めたわけじゃない。具体的に言ってしまえば、風呂場の折り戸を開けようとして取っ手を外してしまい、浴室に閉じ込められた。彼女にとってはただそれだけのことだったんだよ」
「折り戸の取っ手?」
「ああ、やってみるとわかるが、浴室なんかでよく見る折り戸はその構造上、取っ手が外れると、中からは容易には開けられない仕組みになっている。力のかけどころが、あの平面にはほとんどないんだよ。まあこの際その点はどうでもいい。肝心なのは、彼女が自分の責任で『閉じ込められた』って自覚することなんだ」
「じゃあ犯人は、偶然風呂場に閉じ込められた彼女を殺害したってことか?」
「いや、勿論彼女が浴室に閉じ込められたのは偶然なんかじゃない。根拠は後で話すが、これは犯人の計画に間違いなく含まれている。犯人は予め、折戸の取っ手を外れやすくしていたはずだ。事実、さっき確認したら折戸の取っ手には、一度外したのを接着しなおした形跡があったよ」
 稔がほほうと感嘆のため息をつく。
「つまり犯人は、折戸の取っ手を外れやすくする、ただそれだけで彼女を心理的に監禁してしまったんだ。このトリックのメリットは、被害者には単なる事故により出られなくなったという認識しかないから、逃亡のおそれがない点。そして犯人がその場にいなくても被害者を監禁できてしまう点にある」
「な、なるほど……でも浴室の折り戸だろう? 別に鉄扉じゃないんだから、その気になれば脱出も可能なんじゃ……」
「確かに可能だ。ある意味これほど脆弱な密室はないだろうさ。だがここは他人の家。おまけに繰り返し言うようだが、被害者には自分が監禁されているという意識はない。だからドアを壊してまで脱出しようとはまず思わない」
 そう、たとえそれが俺だったとしても、間違いなく脱出を遠慮する。
「それにそう考えると、諏訪さんが俺に向かって発した『美和伯母さんに代わってちょうだい』というセリフもしっくり来る。なんたって彼女は浴室の中で裸なわけだ。少なくとも男に来てほしいとは思わないだろう。それにこれなら犯人が諏訪さんに灯油をかけたのは、彼女についているであろうラベンダーの香りがする石鹸の香りをごまかすため、という意図を読み取ることが出来る」
 一息つく。ここからが本番だ。
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